2019年、第56回文藝賞を受賞。2020年、三島由紀夫賞を受賞した本書。宇佐見りんさんデビュー小説「かか」を読みました。
2020年下半期の芥川賞を「推し、燃ゆ」で受賞した時に地元出身作家であることを知り、デビュー作も読んでみたくなったのがきっかけです。
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あらすじ
19歳の浪人生うーちゃんの大好きな母親=かかは、離婚を機に徐々に心を病んでいった。鍵をかけたちいさなSNSの空間だけが、うーちゃんの心をなぐさめる。もろい母、身勝手な父、助成に生まれたこと、血縁で繋がる家族という単位……自分を縛るすべてが恨めしいうーちゃんは、ある無謀な祈りを抱え、熊野へと旅立つ。
作者
宇佐見りん
1999年静岡県生まれ、神奈川県育ち。2019年、第56回文藝賞を受賞。
ポイント
癖がある文体、読者を選びそう
2021年6月読了 2日間およそ4時間
113ページで薄い本。文字の大きさや行間等に、読みづらさはない。
独特な癖のある文体は好き嫌いありそう。でもきっと、この文体であってこそ伝わる世界観。この文体も作品の表現として書き切っている。
エピソードに無駄がない
金魚に見える経血をすくい明子にぶたれる冒頭から、明子という存在や性格を知るヒントに繋がる。一見関係なさそうな明子とクッキーも、数ページ後に気づかされる。
自傷の描写もかみなりもホロを逃がしてしまったことも、作品のための大事なパーツである。
ぶっ飛んだ発想と、現実的な終わり方
自分を生むにあたり、母は壊れた。母を壊さなければ自分は母とは出会えなかった。だから今度は自分が母をにんしんして、母を壊さず出会いたい。そんな無謀な祈りは叶わず、母の手術は無事成功して物語は終わる。読後、表紙絵を見て、直後のうーちゃんの姿と知った。
宇佐見りんさんの今後のご活躍に期待大
宇佐見りんさんは、「推し、燃ゆ」受賞の時に、地元紙に取り上げられて知りました。生まれは静岡県沼津市とのこと、静岡県東部出身者であることから読んでみようと思いました。
「かか」に一場面だけ、静岡と伊豆半島というワードが出てきます。神奈川県育ちとのことですが、静岡のことも何かしら思い入れがあるのだとしたら親近感。デビュー作にこの地名を登場させる心理を勝手に想像してしまいました。
「かか」 「推し、燃ゆ」 を読み、地元出身作家であることを置いておいても、宇佐見りんさんの純文学の世界は今後もまた読みたいと思えます。独特な感性と表現は、また触れたい良い刺激のものでした。
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読書家の皆様、宇佐美さんではなくて、宇佐見さんですよ~。
紙面イメージ画像
文面を、著作権切れ文章を使って再現してみました。写っている定規を実際の大きさになるよう拡大縮小していただくと、実際の見た目に近づきます。
紙の色の再現は難しかったです。精進します。
文体は独特なので、読み始めは苦しく感じました。世界がわかってくると、この語りにも慣れ、気にせず読み進められます。
文面はご覧の通り、すっきりしていて読みやすかったです。
コメント